男女別のMBTI表を見せる前に――講座の「男性脳・女性脳」を書き直す
男女別のMBTI割合は、誰の何年のデータでしょうか。講座のスライドを作る場面から、2018年と1998年の米国標本、日本の公開データの限界、昔の採点方法、脳や性的指向との混同を確認します。
2018年の米国標本では男性にT、女性にFが多く出ましたが、性別から一人のタイプや能力は決まりません。年や標本が違えば割合も変わります。日本の男女別分布を示す公開データは確認できず、T/Fを脳の性別や性的指向に置き換えることもできません。
- MBTIで男女差がはっきり出るのはT(思考)とF(感情)で、2018年の米国サンプルでは男性の67.6%がT、女性の61.7%がFでした。
- 男性に多いのはISTJ・ISTP・ESTJ、女性に多いのはISFJ・ISTJ・ENFPです(米国のデータ)。
- 1998年と2018年のデータでは数字がかなり違うので、男女別の数字は年とサンプルを確かめる必要があります。
- 日本人の男女別のタイプ分布を示した公開データは、確認できませんでした。
性格についての社内講座を準備する同僚二人が、男女別のMBTI割合をスライドに貼りました。仮の見出しは「男性脳と女性脳」。一人が女性のTの欄を指して、「この人たちは、どう説明する?」と聞きます。二人は見出しを消し、「この標本での回答結果」に書き換えました。これは資料の読み方を考えるための架空の場面です。実際の講座や職場への取材ではありません。
割合の表には、ある集団でどんな結果が多かったかが書かれています。そこに、目の前の同僚の考え方や脳の特徴が書かれているわけではありません。二人は表を消す代わりに、誰の、いつの、どの結果なのかを示す注記を付けることにしました。
まず、表の端に標本と年を添える
出版元が2018年にまとめた米国の代表サンプルは3,578人です。男性の67.6%がT、女性の61.7%がFでした。4つの指標のうち差が目立つのはT/Fで、ほかの3つの差はそれほど大きくありません。次の指標表と全16タイプの表は、その同じ標本の数字です。
| 指標 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 内向(I) | 60.7% | 61.6% |
| 感覚(S) | 70.9% | 66.3% |
| 思考(T) | 67.6% | 38.3% |
| 判断(J) | 50.2% | 54.5% |
| タイプ | 男性 | 女性 |
| ISTJ | 20.9% | 14.5% |
| ISFJ | 5.9% | 14.9% |
| INFJ | 1.5% | 4.2% |
| INTJ | 4.0% | 2.2% |
| ISTP | 13.0% | 6.1% |
| ISFP | 5.2% | 7.9% |
| INFP | 4.6% | 8.0% |
| INTP | 5.4% | 3.6% |
| ESTP | 7.1% | 3.0% |
| ESFP | 4.6% | 5.7% |
| ENFP | 5.6% | 9.2% |
| ENTP | 4.3% | 1.8% |
| ESTJ | 10.6% | 5.6% |
| ESFJ | 3.6% | 8.6% |
| ENFJ | 1.4% | 3.1% |
| ENTJ | 2.2% | 1.4% |
出版元の心理学者は、Tを優先する男性とFを優先する女性はそれぞれおよそ3分の2から7割で、MBTI®が使われる国のほとんどでこの傾向が見られると説明しています。同時に、Fの男性やTの女性も、無視できない数の少数派だとしています。「多い」と「それ以外はいない」の間には、大きな隔たりがあります。
表の数字は「報告されたタイプ」、つまり質問紙の回答から出た結果です。本人がフィードバックを受けて確かめたタイプの割合ではありません。対象は米国で北米英語を読む人たちで、日本の男女比率を表す表でもありません。この注記をスライドから外すと、表が説明する範囲がいつの間にか広がってしまいます。
多い順を読むときも、一人の特徴は決まらない
同じ2018年の表では、男性に多いのはISTJ・ISTP・ESTJ、少なめなのはENFJ・INFJ・ENTJです。女性に多いのはISFJ・ISTJ・ENFP、少なめなのはENTJ・ENTP・INTJでした。たとえばINTJの女性の数字を見ても、そこから「この人は普通の女性と違うはず」という性格の説明は生まれません。
Fの男性は男性の32.4%、Tの女性は女性の38.3%です。少数派といっても3人に1人前後で、Tの女性は約4割います。講座で「珍しい人もいます」と付け足すだけでは、聞く側を特別扱いしてしまうかもしれません。「同じ性別でも好みは違う」と、表の読み方そのものを伝えられます。
昔の表と今の表を、同じ数字として使わない
「女性の約75%がF」という数字の出どころは、1998年のマニュアルに載る米国の全国サンプル3,009人です。そこでは男性の56.5%がT、女性の75.5%がFでした。2018年の男性T67.6%、女性F61.7%とは違います。スライドに年を書かないと、別々の標本を同じものとして説明しかねません。
INFPでも、1998年は男性4.1%、女性4.6%と近い数字でしたが、2018年は男性4.6%、女性8.0%でした。年や標本が変われば結果は動きます。この差だけを性格の時代変化の証拠にすることもできません。二人は古い数字の横に新しい数字を混ぜるのをやめ、資料ごとに年を揃えて示すことにします。
採点方法にも歴史があります。以前の版では、T/Fについて男女で異なる採点を行っていました。現在の版では男女で異なる質問を使っていない、と出版元は説明しています。「昔も今も同じ検査の数字」とだけ言わず、こうした条件も含めて読んでください。
日本の数字に置き換えたいとき、わからない欄を残す
当サイトが確認した範囲では、日本人のタイプを男女別に示す公開データは見つかりませんでした。出版元の日本語の技術資料は316人で、女性53%、男性47%という構成を示しますが、タイプ別の男女の内訳はありません。集めやすい人を集めた標本なので、日本語話者全体の分布を推測してはいけません。
16Personalitiesの日本の集計は、2025年10月〜2026年9月の約2,650万回の診断結果です。ここにも男女別の数字はありません。受検回数の大きさを見て、存在しない内訳を補うことはできません。出典を確かめられない日本の男女別ランキングにも注意が必要です。
二人は日本の欄に、米国の数字をそのまま入れません。「日本の男女別分布は確認できない」と書きます。情報がないところを空けておくことも、資料を作る際の大事な判断です。見栄えのためにすべての欄を埋めるより、参加者がどこまでわかっているかを確かめられます。
T/Fは脳を分けず、性的指向も判定しない
T/Fは、決めるときに客観的な判断を重く見るか、関わる人への共感を重く見るかという好みです。「男性は論理的、女性は感情的」という俗説の「男性脳・女性脳」を測ってはいません。INTPの女性を男性脳と呼ぶことも、男性にTが多いという数字から作ったイメージにすぎません。
1,400人以上の脳画像を調べた研究では、男女の特徴には大きな重なりがあり、人の脳を男性脳と女性脳の2つにはっきり分けられないと報告されました。ただし、この研究には反論も出ています。この研究を持ち出してMBTIの好みと脳の対応が確定したとすることもできません。
MBTI®で性的指向はわかりません。出版元は米国のLGBTQの人たち256人について、検査の信頼性と妥当性を確認し、利用できることを示す技術資料を出しています。ただし、集めやすい人から集めた標本であり、LGBTQの人たちのタイプ分布を推測してはいけません。使えるかを調べる資料と、誰に何タイプが多いかを調べる資料は別です。
スライドの最後に、個人へ尋ねる余地を残す
二人は説明文を読み合わせます。「この標本では差がある。ただ、あなたの好みは性別から決められない」。公式団体も、タイプに優劣はなく、どのタイプにも強みと課題があるという立場です。表の多数派に当てはまる人も、少数派に当てはまる人も、それだけで能力や人柄は評価できません。
資料を見せる目的が自己理解なら、「自分は決めるとき何を確かめているだろう」と本人が考えられる余白を残せます。消した「男性脳・女性脳」の見出しを、別の決めつけに置き換える必要はありません。数字は出どころと一緒に示し、その先の一人の話は、その人から聞く。それが二人の選んだ講座の進め方です。
あわせて読む:『MBTI珍しいランキング【女性・男性別】』、『INFP男性は珍しい?』、『日本のMBTI割合ランキング』
出典
- 2018年の米国サンプルの男女別の割合:Schaubhut ほか(2018)米国版補足マニュアル Tables 5–8 (参照)
- 1998年の米国全国サンプルの男女別の割合:Psychometrics Canada(2008)、MBTI Manual(1998)の米国全国サンプルを掲載 (参照)
- T と F の男女差についての出版元の説明:The Myers-Briggs Company「World Introvert Day: Introversion in-depth」(2023年) (参照)
- 以前の版の男女別の採点:The Myers-Briggs Company(2021) (参照)
- 日本語サンプルの男女比:The Myers-Briggs Company「Japanese Technical Brief for the MBTI® Global Step I™ and Step II™」(N=316) (参照)
- 16Personalities の日本のデータ:16Personalities「Japan Personality Profile」(2025年10月〜2026年9月、2026年10月に確認) (参照)
- T と F の意味:The Myers & Briggs Foundation「MBTI Basics」 (参照)
- 脳の男女差の研究:Joel ほか(2015)PNAS 112(50) (参照)
- LGBTQ のサンプルについての技術資料:Schaubhut & Thompson(2020)LGBTQ Population Sample Technical Brief (参照)
- タイプに優劣はないこと:The Myers & Briggs Foundation「Myers-Briggs Overview」 (参照)
相性ペア
恋愛テストを試すMBTI Type Guide の編集名義です。記事の調査・執筆・レビュー・翻訳の手順は「編集方針」ページに記載しています。
よくある質問
米国の表で少ないタイプなら、日本でも珍しいですか?+
この表からはわかりません。国、対象、年、検査の条件を揃える必要があります。日本の男女別分布を示す公開データは確認できていません。
1998年と2018年はどちらを信じればよいですか?+
別々の標本の結果として出どころと年を示します。異なる数字を混ぜて、共通の割合にしないでください。
性別や性的指向をタイプから推測できますか?+
できません。集団の男女別比率は個人の性別・性的指向を判定せず、LGBTQの技術資料も分布の推定を認めていません。
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